)” の例文
かぜつめたさわやかに、町一面まちいちめんきしいた眞蒼まつさを銀杏いてふが、そよ/\とのへりをやさしくそよがせつゝ、ぷんと、あきかをりてる。……
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうした場合には、往来へ塀越へいごしに差し出たの枝から、黄色に染まったさい葉が、風もないのに、はらはらと散る景色けしきをよく見た。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雪吹ふゞきなどにつもりたる雪の風に散乱さんらんするをいふ。其状そのすがた優美やさしきものゆゑ花のちるを是にして花雪吹はなふゞきといひて古哥こかにもあまた見えたり。
知らぬ人も少なかろうがこの例を一つだけ挙げておこう。伊勢いせでは櫛田川くしだがわのほとりのある村で、可愛かわいい童子がの上にいるのを見て
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
与兵衛はさう考へながら、山の頂から真直まつすぐに川の方へ、の枝につかまりながら、つるすがりながら、大急ぎに急いで降りて行きました。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
彼らは銃剣で敵を突き刺し、その辮髪をつかんでに巻きつけ、高粱畠コーリャンばたけの薄暮の空に、捕虜になった支那人の幻想を野曝のざらしにした。
ただ豊吉の目には以前より路幅みちはばが狭くなったように思われ、が多くなったように見え、昔よりよほどさびしくなったように思われた。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
の揺れる音が風のように聞えて来た。月のない暗い花園の中を一人の年とった看護婦が憂鬱に歩いていた。彼は身も心もしおれていた。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
牡丹屋ぼたんやの裏二階からは、廊下のひさしに近く枝をさし延べているしいこずえが見える。寛斎はその静かな廊下に出て、ひとりで手をもんだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よく飛ぶ鳥は足が弱く、よく走る鳥ははねが小さい。たくみにおよぐものはに登りえず、たくみに枝を渡るものは地に穴をうがちえない。
自然界の虚偽 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
ほの白い地面と、黒い松のとを長い間見馴みなれて来た私は、その時やっと、松の葉と云うものが緑色であったことを想い出した。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
窓から首を出して見ると、一帯の松林のの間から、国府津こうづに特有な、あの凄味すごみを帯びた真蒼まっさおな海が、暮れ方の光を暗く照り返していた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もう日がとっぷりれて、よるになりました。くらあいだから、けばびそうにうす三日月みかづきがきらきらとひかってえていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
保吉は悪魔の微笑の中にありありとファウストの二行にぎょうを感じた。——「一切の理論は灰色だが、緑なのは黄金こがねなす生活のだ!」
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
枳殻垣の外にはしいが二三本、それは近所の洗濯物の干場に利用されてあります。表へ廻ると、直助とお辰はけろりとして迎えました。
新井あらい宿しゅくより小出雲坂おいずもざかおいずの坂とも呼ぶのが何となく嬉しかった。名に三本木の駅路うまやじと聴いては連理のの今は片木かたきなるを怨みもした。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
するとまの悪いことに、抱えていらっしゃる琴が、の幹にぶつかって、じゃらじゃらじゃらんとたいそうなひびきを立てて鳴りました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
上役人かみやくにんの扱いに不服を唱えるとは不届千万ふとゞきせんばんな奴だと云って、その三人を庭のの枝にくゝり上げ、今日で三日半ほど日乾ひぼしにされて居ります
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
向こうの方に葉のついた無花果いちじくのあるのを見つけて、そばに寄って見られたが、葉だけではなかったので、その樹にむか
そうすると、あすこが安藤阪あんどうざかで、の茂ったところが牛天神になるわけだな。おれもあの時分には随分したい放題な真似まねをしたもんだな。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのそばにはまだ五六人の仲間がいて潰した皮粕かわかすまるめてざるの中へ入れたり、散らばっているの皮を集めてその手許てもとに置いてやったりした。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そばにはおおきないちょうのがあって、このごろかぜに、黄色きいろが、さらさらとって、あしもとは一めんいたようになっていました。
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つめたいしめった空気がしんとみんなのからだにせまったとき子供らは歓呼かんこの声をあげました。そんなには高くふかくしげっていたのです。
そのとき杜松ねずがザワザワとうごして、えだえだが、まるでってよろこんでいるように、いたり、はなれたり、しました。
笛師はそっと抜け出して、そこらの高いの上にじ登ると、枝や葉が繁っているので、自分の影をかくすに都合がよかった。
一本のから一日におよそ一ポンドの採収が出来ると云ふのが真実ほんとうなら大した利益のあるはずである。人夫には馬来マレイ人と支那人を使用して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
敗れた正成、正季まさすえらの一族はどう逃げ道をとったか? 昔は、この地方一帯にくすが多かったという川辺氏の話の端にも興味はつきない。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いているところを見透かしては、十尺ぐらいの空間を直滑降で飛ばし、みきのすぐ前で雪煙りをあげて急停止する。
蛙君かへるくん、きみはまあなにをゆつてるんだ。ほしくには、こうしたうへの、そのもつとたかいたかあいところにある天空そらなんだよ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
元来がんらいはこのを食害する獣類(それは遠い昔の)などを防禦ぼうぎょするために生じたものであろうが、こんな開けた世にはそんな害獣がいじゅうもいないので
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
まあしいといへばかみまいでもなんだが、これ、うちぐにもてればつんだが、しいことをしたつてつてるのさ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼女は両脚をそろえて地べたの上を跳び回り、それから、例の一直線な機械的な飛び方で、一本のを目がけて飛んで行く。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
この、小石川こいしかわ金剛寺坂こんごうじざかのあたりは、上水にそってが多い。枝の影が交錯して、畳いっぱいにはっている。ゆれ動いている。戸外は風があるのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかしてこの夢を実現するにあたってダルガスのるべき武器はただ二つでありました。その第一は水でありました。その第二はでありました。
それを覆ふて居る大きい木は月桂樹の葉見たやうな、葉の大きいで珊瑚のやうな、赤い実が葉の根に総て附いて居る。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
暑さをさえぎる大きな松のまばらにそびえ立っていた。幼い時の楽しい思い出話にまない葉子にとって、そこがどんなにか懐かしい場所であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
|が多いのです。で、この問答が行われて居る場所もまた実によい。チベットは元来のないところであるが、そこにはよい樹が植わって居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
あまあしがたち消えながらも何處どこからとなく私のはだを冷してゐる時、ふとあかい珊瑚の人魚が眞蒼まつさをな腹を水に潜らせる
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
まずクック氏は、蛇類は建築物や著しき廃址に寓し、いけかべ周囲ぐるりい、不思議に地下へ消え去るので、鳥獣と別段に気味悪く人の注意をいた。
そこにはもなければ、腰掛けベンチもなく、それに類したものがなにもなかったことを、私はよく覚えている。むろんその運動場は家の背後うしろにあったのだ。
今ではこのような九州の山奥でも、白檀のそのような大きいは殆んどなくなっているので、伯父は大変喜んで、それをみんな買ったのだそうである。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
陽気な陽気な時節ではあるがちょっとの間はしーんと静になって、庭のすみ柘榴ざくろまわりに大きな熊蜂くまばちがぶーんと羽音はおとをさせているのが耳に立った。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
といってしかりました。こういいながら茶人は、自分で庭へ下りていって、ゆすったのです。そして庭一面に、紅の木の葉を、散りしかせたのでした。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
なわを受けて始めて直くなるのではないか。馬にむちが、弓にけいが必要なように、人にも、その放恣ほうしな性情をめる教学が、どうして必要でなかろうぞ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
罹災者りさいしやたゞちにまたみづか自然林しぜんりんからつて咄嗟とつさにバラツクをつくるので、がう生活上せいくわつじやう苦痛くつうかんじない。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
伯良は子良がぼんやりと外の松のの下に立つて母の飛んで行つた空をながめてゐるのを見ると、よくこんな愚痴ぐちまじりの小言のやうなことを言ひました。
子良の昇天 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
だが、熱海でのわにの話のようなものは、猿もから落ちるたとえのように福島女史の図らざりし不覚であろう。
鮟鱇一夕話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
向うの方に青いが五、六本、教室の窓の竹格子にむかって柘榴ざくろの花がまっかだった。両側が土蔵と土蔵で、突当りが塀で他家よその庭木がこんもりしていた。
踏分々々ふみわけ/\たどりゆきて見れば人家にはあらで一簇ひとむらしげりなればいたく望みを失ひはや神佛しんぶつにも見放みはなされ此處にて一命のはてる事かと只管ひたすらなげかなしみながら猶も向を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山の斜面しやめんに露宿をりしことなればすこしも平坦へいたんの地を得す、為めに横臥わうぐわする能はず、或は蹲踞するあり或はるあり、或は樹株にあしささへてするあり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)