かき)” の例文
一冊の系図書けいずがきと、一枚のかきつけとが出て来て、その書きつけで初代というお前の名も、その時丁度ちょうどお前が三つであったことも分ったのだよ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仲冬のすゑ此人居間ゐまの二階にて書案つくゑによりて物をかきてをられしが、まどひさしさがりたる垂氷つらゝの五六尺なるがあかりにさはりてつくゑのほとりくらきゆゑ
その後古い報知新聞を貸してれて、中を見ると明治十二年の七月二十九日から八月十日頃まで長々とかき並べて、一寸ちょい辻褄つじつまあって居ます。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いよ/\心もとなくて媼の授けしつゝみ引き出すに、種々のかきものありと覺ゆれど、夜暗うして一字だに見え分かず。兎角して曉がたになりぬ。
看板をかきかえるひまもない、まだ出たてだという、新しさより、一人旅の木賃宿に、かよわい女が紙衾かみぶすまの可哀さが見えた。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なほ此後こののちもこれにつくさんのれうにせまほしとておのれにそのよしはしかきしてよとこはれぬかゝるかたこゝろふかうものしたまへるを
うもれ木:01 序 (旧字旧仮名) / 田辺竜子(著)
ねたみ御成門への内に大文にて祐天風いうてんふう南無阿彌陀佛なむあみだぶつかきたりたれとも知れざれども不屆ふとゞき仕方しかたなりよつて御成門なりもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この月末にかきかへを泣きつきて、をどりの一両二分を此処に払へば又三月の延期のべにはなる、かくいはば欲に似たれど
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かきやうはいろいろあるべし。唯さわがしからぬ心づかひ有りたし。『猿簔さるみの』能筆なり。されども今少しおほいなり。作者の名だいにていやしく見えはべる。」
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一旦いったん帰京かえって二度目にまた丁度ちょうど行きつきたる田原がきい狼狽ろうばいし、わが書捨かきすてて室香に紀念かたみのこせし歌、多分そなたがしって居るならんと手紙の末にかき頓智とんちいだ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼が横浜で捕えられたとき、何だかワケの分らないかきツケ類の中に時信全作の所番地と姓名を書いたものがあったのです。それについて一色の言葉はこうでした。
梅原が近頃エジプ王を訳したが其れにいうの型をかき加へて日本へ紹介するつもりだと言ふと、ムネ・シユリイは喜んで「型のわからない所があつたら自分に聴いてれ」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この秋山先生もかきもらしてはならない人だ、学校そのものもまた! そして年の暮のことどもも——
其中そのうち祖父ぢいさまがすりものの上へ筆の先で一寸ちよつと蚯蚓みみずよぢれたやうなものをおかきなすつたが見えましたから、不思議で/\、黙つて居ようと思つても、らへ切れませんで、ツイ
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
この宝の船は種々くさぐさの宝を船に積たる処をかき回文かいぶんの歌を書添へ元日か二日の夜しき寐してしき夢は川へ流す呪事まじないごとなりとぞ、また年越としこしの夜もしくことある故に冬季ともいひたり
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
直様すぐさま家内のものをも遠ざけ、かきものをするからとて、二階の一間ひとまに閉じこもったが、見廻せば八畳の座敷狭しと置並べた本箱の中の書籍しょじゃく勿論もちろんとこの飾物から屏風びょうぶの絵に至るまで
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何デモオモイうかンダコトヲかきツケテオイテ、ソレガドレダケノ月日ヲ経タラ、フルクナルカト申スコトヲ試験シテオリマス、何ヲオ隠シ申シマショウ私モ華族ノ二男ニハ生レマセヌノデ
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
建築費に三千ポンドも使った彼は、いやでもかきくらざるを得なかったのである。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
左様さうですツてネ、貴嬢あなた、篠田さんが自分の妾になさるんだとか何とかかきましたつてネ、まり馬鹿々々しいぢやありませんか、ナニ、みんな自分の心でひとを計るのですよ、クリスマスの翌日
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
内にはすうちやんが今日をはれと着飾つて、その美しさと謂ふものは! ほんにまああんな縹致きりようと云ひ、気立と云ひ、諸芸も出来れば、よみかき針仕事はりしごと、そんなことは言つてゐるところではない。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ざうする菊塢きくうの手紙には、うめ一枝いつしゑがきて其上そのうへそのの春をおわかまをすといふ意味の句あり、また曲亭馬琴きよくていばきんめいしつしてのち、欝憂うさを忘るゝためにおのれと記臆きをくせし雑俳ざつぱいかきつらねて、友におくりしうち
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
申すと、おかきなされたので、その夜の中に
その他の弟のかきものなぞも、残らず探し出して調べました。しかし、そこには、恋の記録らしいものは、何一つ発見することが出来ないのです。
日記帳 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すかし見れば彼の十七屋となやのの飛脚に相違なしよつて重四郎は得たりとしりひつからげて待つほどに定飛脚ぢやうひきやくかきたりし小田原挑灯を荷物にもつ小口こぐち縊付くゝりつけ三度がさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あやしき書風しよふう正躰しやうたいしれぬ文字もじかきちらして、これが雪子ゆきこ手跡しゆせきかとなさけなきやうなるなかに、あざやかにまれたるむらといふらうといふ、あゝ植村うゑむら録郎ろくらう植村うゑむら録郎ろくらう
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
古風作者こふうさくしゃかきそうな話し、味噌越みそこし提げて買物あるきせしあのおたつが雲の上人うえびと岩沼いわぬま子爵ししゃくさま愛娘まなむすめきいて吉兵衛仰天し、さてこそ神も仏も御座る世じゃ、因果覿面てきめん地ならしのよい所に蘿蔔だいこは太りて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
蛾眉山がびさんのあるしよくは都をる事とほ僻境へききやうなり。推量すゐりやうするに、田舎ゐなか標準みちしるべなれば学者がくしやかきしにもあるべからず、俗子ぞくしの筆なるべし。さればわが今のぞく竹を※とにんべんあやまるるゐか、なほ博識はくしきせつつ。
田村俊子さんがおかきになった日記の中で、読んだことがあります。みじかい文のなかに、あなたという方がくっきりと浮いて見えたのをおぼえております。見つけだしましたから書いて見ましょう。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
おぢいさま、そのめゝずみたいな物なぜおかきなすつたの?
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
出すべし御奉行樣のそばに居る目安方めやすかたの御役人是を讀上よみあ此書付このかきつけは何者が認めたるやと御尋おたづねの時われかきたりと云ひてはわるし因て昨日御門へ這入はひりかねて御門前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さりとて無情つれなくなげかへしもせねど、らきてみしやいなじんすけこたへぶりの果敢はかなさに、此度このたびこそとかきたるは、ながひろにあまりおもふでにあふれて、れながらくまでもまよものかと
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蛾眉山がびさんのあるしよくは都をる事とほ僻境へききやうなり。推量すゐりやうするに、田舎ゐなか標準みちしるべなれば学者がくしやかきしにもあるべからず、俗子ぞくしの筆なるべし。さればわが今のぞく竹を※とにんべんあやまるるゐか、なほ博識はくしきせつつ。
たヾ一寸ちよつと吾助ごすけ一筆ひとふでにてもとひたれば、此卷紙このまきがみなにかきぼくたまはれ、吾助ごすけ田舍ゐなかかへりてもところなれば、大方おほかた乞食こじきるべきにや、それれではぼくどうしてもやなり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
辞世じせいとて口碑こうひにつたふる哥に「岩坂のぬしたれぞとひととは墨絵すみゑかきし松風の音」遺言ゐげんなりとて死骸なきから不埋うづめず、今天保九をさる事四百七十七年にいたりて枯骸こがいいけるが如し。是を越後廿四奇の一にかぞふ。
辞世じせいとて口碑こうひにつたふる哥に「岩坂のぬしたれぞとひととは墨絵すみゑかきし松風の音」遺言ゐげんなりとて死骸なきから不埋うづめず、今天保九をさる事四百七十七年にいたりて枯骸こがいいけるが如し。是を越後廿四奇の一にかぞふ。
學士がくし出立後しゆつたつごの一日二日より處業しよげうどことなく大人をとなびていままでのやうわがまヽもはず、ぬひはり仕事しごとよみかきほか以前いぜんしてをつヽしみさそひとありとも人寄ひとよ芝居しばいきしことあしけねば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その主人しゆじんに一ねん馴染なじみりの奉公人ほうこうにん少々せう/\無心むしんかぬとは申されまじ、此月末このつきずゑかきかへをきつきて、をどりの一りやう此處こゝはらへばまたつき延期のべにはなる、くいはゞよくたれど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)