黒船くろふね)” の例文
黒船くろふねだ、黒船だ」と叫んだその聞きそこねか、そうでなければ、早まった人たちの間違いだろうと、一目でそうわかりました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんなわけで、黒船くろふねは悪い病いをはやらせるという噂が立って、江戸の人間はいよいよ異人を嫌うようになりました。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……あら嬉しや!三千日さんぜんにちの夜あけ方、和蘭陀オランダ黒船くろふねに、あさひを載せた鸚鵡おうむの緋の色。めでたく筑前ちくぜんへ帰つたんです——
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いはゆる黒船くろふねの砲声や黒煙は、手槍や火縄銃を持つ沿岸警備の武士達を驚駭きやうがいさせた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
犬をいた甲比丹カピタンや、日傘をさしかけた黒ん坊の子供と、忘却の眠に沈んでいても、新たに水平へ現れた、我々の黒船くろふね石火矢いしびやの音は、必ず古めかしい君等の夢を破る時があるに違いない。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
榧寺というのは俗称で、本当は正覚寺といって黒船くろふね町にあり、境内に榧の巨木があるところからそう呼ばれている、——三樹八郎は医者を頼んだその足で、宙を飛ぶように正覚寺へ駆けつけた。
武道宵節句 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
むかしよりいまにわた黒船くろふねえんがつくればふかとなる。サンタマリヤ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
……あらうれしや!三千日さんぜんにちあけがた和蘭陀オランダ黒船くろふねに、あさひせた鸚鵡あうむいろ。めでたく筑前ちくぜんかへつたんです——
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きせるの先で指さす品川の沖には、先月からイギリスとアメリカの黒船くろふねが一艘ずつ碇泊しているのが、大きい鯨のように見えた。巻煙草のぬしがその船の乗組員であることを、松吉はすぐに覚った。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
黒船くろふね加比丹かひたんを、紅毛こうまう不可思議国ふかしぎこく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はた掻き濁し、暗澹あんたんと、あはれ黒船くろふね
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)