黒暗くらやみ)” の例文
いひ終れる時黒暗くらやみ廣野ひろのはげしくゆらげり、げにそのおそろしさを思ひいづればいまなほわが身汗にひたる 一三〇—一三二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
飛び込んだ時にはもう白い光の影もなく、ただ薄暗い元の部屋に壊れかかった数ある卓子テーブルがみな黒暗くらやみの中に隠れていた。
白光 (新字新仮名) / 魯迅(著)
そして彼は最後に言う「我は暗き地、死のかげの地にかん、この地は暗くして晦冥やみに等しく死の蔭にして区別わかちなし、かしこにては光明ひかり黒暗くらやみの如し」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
柳橋の裏河岸うらがしに、大代地おおだいじに、大川の水にゆらぐ紅燈こうとうは、幾多の遊人の魂をゆるがすに、この露路裏の黒暗くらやみは、彼女の疲労つかれのように重く暗くおどんでいる。
諄々くどくど黒暗くらやみはじもうしてあなたの様ななさけ知りの御方に浅墓あさはか心入こころいれ愛想あいそつかさるゝもおそろし、さりとて夢さら御厚意ないがしろにするにはあらず、やさしき御言葉は骨にきざんで七生忘れませぬ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たこは富士男をのせたまま、黒暗くらやみのなかをどこともなく飛び去った。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
黒暗くらやみよもを襲ふとき
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
底ふかく黒暗くらやみとざし
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
8 海の水流れで、胎内より湧き出でし時誰が戸をもってこれを閉じこめたりしや、9 かの時我れ雲をもてこれを衣服ころもとなし、黒暗くらやみをもてこれが襁褓むつきとなし
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
宣統せんとう三年九月十四日——すなわち阿Qが搭連を趙白眼に売ってやったその日——真夜中過ぎに一つの大きな黒苫くろとまの船が趙屋敷の河添いの埠頭に著いた。この船は黒暗くらやみの中に揺られて来た。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
けだしこの御しがたき力を制御せしは神にほかならずとの意である。次に九節はこの海という嬰児に対して「雲を以てこれが衣服となし、黒暗くらやみを以てこれが襁褓むつきとなし」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)