鹿沼かぬま)” の例文
其所そこは栃木県下の発光路ほっこうじという処です。鹿沼かぬまから三、四里奥へ這入はいり込んだ処で、段々と爪先つまさき上がりになった一つの山村であります。
宇都宮を間に挟み東は真岡もうかより西は文狭ふばさみ鹿沼かぬま一帯を見て廻った。大体宇都宮を中心として十里の半径を描けば、ほぼその中に分布される。
野州の石屋根 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
鹿沼かぬまの、博奕打ばくちうち、玉田屋の酉兵衛とりべえは、この一夏で、日光の出開帳でかいちょうから上げた寺銭の大部分を、今、連れてゆく、孫のようなお八重の身代金に、投げだしたといわれていた。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その延長は、東照宮付近から今市に出て、三方に別れ、鹿沼かぬま街道は三里十五町、文挟ふばさみの先まで——宇都宮街道、会津街道は、おのおの二里十六町、まさに天下の偉観です。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この都賀山、安蘇山は、鹿沼かぬまからも入つて行ければ、栃木からも入つて行けた。
日光 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
栃木県のものとしては、益子ましこの焼物や、烏山からすやまの和紙や、鹿沼かぬまほうきをまず挙げねばなりません。それほど仕事は盛であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
真岡木綿もうかもめん」は有名でしたが、もう全くすたれました。同じ栃木県の鹿沼かぬま栃木とちぎあたりは麻の栽培が盛でありますが、材料を出すにとどまって織物は作られておりません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
宇都宮うつのみやから益子に、また鹿沼かぬまや日光に行くごとに度々私の心をいた建物を見た。長屋門ながやもんの美しさもその一つだが、私にはことのほかその地方の民家で用いる石屋根が美しく想えた。
野州の石屋根 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
鹿沼かぬまほうき丸亀まるがめ団扇うちわ天童てんどう将棊駒しょうぎごま久留米くるめかすり結城ゆうきつむぎ土州どしゅうの金物、それぞれに面白い発達である。そういう場所からはとりわけ生産の組織について多くを学ぶことが出来る。
地方の民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
鹿沼かぬま上都賀かみつが郡で、日光には近いところであります。ここは前述のように麻緒あさおで名を広めましたが、しかしその他に関東一帯はもとより、随分遠い地方までこの町から運び出されるものがあります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)