鳥羽絵とばえ)” の例文
旧字:鳥羽繪
あるいはむしろ漫画家のかいた鳥羽絵とばえがいちばん有効かもしれない。上手じょうずなカリカチュアは実物よりも以上に実物の全体を現わしているから。
自画像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
馬喰町の夜店がさびれると同時に、鳥羽絵とばえ升落ますおとしの風をして、大きな拵らえ物の鼠を持って、好く往来で芸をして銭を貰っていたのを覚えている。
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
椿岳の画は大津絵でも鳥羽絵とばえでもない、蕪村でも大雅でもない。尺寸の小幀しょうていでも椿岳一個の生命を宿している。
百鬼夜行ひゃっきやこうの図と鳥羽絵とばえの動物漫画とは、さまざまなる寓意ぐういの下に描直かきなおされ、また当時物価の高低は富土講ふじこうの登山あるひは紙鳶たこの上下によりて巧に描示えがきしめされたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
泥濘ぬかるみをとび越えて走って行く御免安兵衛の姿は、鳥羽絵とばえやっこのような恰好に、両側の家をもれる灯のなかにおどったり消えたりして、見るみるうちに小さくなる。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さわやかな少年の声は道場の板の間を矢の如く走ると見ればあわれむべし、大兵の男は板の間も砕くる響きを立ててそこに尻餅しりもちをついて、鳥羽絵とばえにあるような恰好かっこうをして見せたので
のぞいている様子なんざ、ちょっと、鳥羽絵とばえにもない図だぜ。……ついでのことに股倉眼鏡またぐらめがねでもしてみたらどうだ、変った景色が見えるかもしれねえ。……お江戸が見える、浅草が見えるッてな
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いや、こういうことをお話します、わたし鳥羽絵とばえているかも知れない。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
坊主ばかりの相撲に至っては、たしか鳥羽絵とばえ中のものである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
長く鳥羽にいたので、世人はそれを、鳥羽絵とばえと呼んだ。
つまりは一種の人相書きか鳥羽絵とばえをかいている場合も多いように思われるが、そのような不完全な「像」が非常に人間に役に立って今日の文明を築き上げたと思うと妙な気持ちがする。
自画像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)