鬱血うっけつ)” の例文
死体にはの毛で突いた程の外傷もなく、鬱血うっけつも、斑紋はんもんも、苦悶の跡も無いばかりでなく、毒物で殺したという疑も絶対にありません。
葬送行進曲 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
熱病のような本能の情炎が、またそれをあおる癆咳ろうがいという美しき病の鬱血うっけつが、たまたま自分という対象に燃えているだけなのではないか。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屍体したい頸部には絞縛こうばくしたる褶痕しゅうこん鬱血うっけつ、その他の索溝さっこう相交あいまじって纏繞てんじょうせり、しかれども気管喉頭部、及、頸動脈等も外部より損傷を認むるあたわず。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
絶望して腕をこまねく折、始終を物陰で見届けていた、これも三勇士の一人である尾張の某という侍が出てきて、小柄で腕の鬱血うっけつをとりのぞいてくれる。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
切支丹の拷問に「囚徒」を逆吊さかづりにして、その頭の鬱血うっけつと、胸を臓腑ぞうふが圧迫することのために、口からはもとより、ついには目と鼻とからまで出血して、たいてい七
この有名なるめる友人のお蔭で、そのやしきに出入しては、自分の財布に相談してはいつになっても得られないような御馳走にありついたり、たまには独り身の鬱血うっけつを払うために
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
身体中の筋肉という筋肉が、鬱血うっけつっていて、ぎちぎちと鳴るように感じた。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)