高縁たかえん)” の例文
君長は女を放してつるぎを抜いた。大夫の首は地に落ちた。続いて胴が高縁たかえんに倒れると、杉菜すぎなの中に静まっている自分の首をのぞいて動かなかった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
給金しんしょう談判かけあいでした。ずんずん通り抜けて、寺内へ入ると、正面がずッと高縁たかえんで、障子が閉って、茅葺かやぶきですが本堂らしい。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「上人は、そも、どんなお気持でおられるだろうか……」その師の法然房ほうねんぼうの寝所は、高縁たかえんを一つ隔てて彼方あなたにあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は高縁たかえんに差し込んだ太陽の光りを浴びて眠っている童男の傍を通りながら、王宮の奥深くへだんだんと這入はいっていった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
その障子で、姿を仕切って、高縁たかえんから腰をおろして、すそを踏落した……と思う態度ふりで、手をのばして、私においでおいでをする。それが、白いのだけちらちらする、する度に
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卑弥呼ひみこの足音が高縁たかえんの板をきしめて響いて来た。君長ひとこのかみ反耶はんやは、竹の遣戸やりどを童男に開かせた。薄紅うすくれないに染ったはぎの花壇の上には、霧の中で数羽の鶴が舞っていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ふと、高縁たかえん雨落あまおちに、同じ花が二、三輪咲いているように見えた。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)