骨立こつりつ)” の例文
目のきれの長い、まつげの濃い、しもぶくれの優しい顔が、かりそめに伝うる幽霊のように、脱落骨立こつりつなどしているのでない。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は一室にこもり、静思してくらわず、もって骨立こつりつするに至った。数日の後、ようやく思い得たと信じて、再び瑟を執った。そうして、極めておそる恐る弾じた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その中に足尾方面の山だけが、その鑛毒にされて焦枯やけがれた林木の見るも情ない骨立こつりつした姿を見せてゐる。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
さて先王の運命は何人なんびとも知る者がなかった。その死骸がポント・フラクト城より移されてセントポール寺に着した時、二万の群集は彼のしかばねめぐってその骨立こつりつせる面影おもかげに驚かされた。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
令史れいしいへ駿馬しゆんめあり。無類むるゐ逸物いちもつなり。つね愛矜あいきんして芻秣まぐさし、しきりまめましむれども、やせつかれて骨立こつりつはなはだし。擧家きよかこれをあやしみぬ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)