駿河守するがのかみ)” の例文
そこで江戸で勘定奉行になつてゐる前任西町奉行矢部駿河守するがのかみ定謙に当てた私信を書いて、平山にそれを持たせて、急に江戸へ立たせたのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
旧幕府の大目付おおめつけで外国奉行を兼ねた山口駿河守するがのかみなぞまで——御一新以前だけでも、それらの歴史の上の人物はいずれもこの旧本陣に時を送って行った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
名に負う鏡弓之進は、高遠たかとおの城主三万三千石内藤駿河守するがのかみの家老の一人、弓は雪河流せっかりゅう印可いんかであるが、小中黒こなかぐろの矢をガッチリとつがえキリキリキリと引き絞ったとたん
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
駿河守するがのかみなればこそ、出来るだけ、愛してやろうとお思いになっている——が、し、あれが、御機嫌にそむくようなことになると、あの方は、手の裏を返したように
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
加藤駿河守するがのかみ、浦野民部などまでを負い、とりわけ原美濃守は、この一戦に十三創の重傷で後退したといわれ、また同じく敵方の旗本、新海又三郎、辻六郎兵衛は討死。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
是忠親王の曾孫そうそんであり、父の篤行あつゆきから平姓を賜わり、和漢の才もあった人ではあるが、従五位上駿河守するがのかみになっただけで終った余り世栄を享けなかった人であるから、年齢其他の関係から
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
駿河守するがのかみ家康これにあり、われと思わん者はであえ、この首あげて功名せよ」
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いや、事実相手のご老体は、駿河守するがのかみ家老職のご後室さまなのでした。
「……もう古い事ですわ。明治二十年頃のお話ですからね。畿内の小さな大名植村駿河守するがのかみという十五万石ばかりの殿様の御家老の家柄で、甘木丹後あまきたんごという人の末ッ子に甘木柳仙りゅうせんという画伯えかきさんがありました」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「私は酒井駿河守するがのかみの家臣で、井沼重三郎という者です」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)