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駭
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おどろか
中にカラブリア
産の一美人ありて、群客の目を
駭せり。その美しき黒き瞳はこれに
右手を借したる
丈夫の面に注げり。是れララと我となり。
彼は
実に夢ならでは有得べからざる
怪き夢に
弄ばれて、
躬も夢と知り、夢と覚さんとしつつ、なほ
睡の中に
囚れしを、
端無く人の呼ぶに
駭されて、
漸く
慵き枕を
欹てつ。
すべて
大材を
用る事目を
駭せり、これ皆雪に
潰ざるの用心なりとぞ。
黄金を
織作せる
羅にも似たる
麗き日影を
蒙りて、
万斛の珠を鳴す谷間の清韻を楽みつつ、
欄頭の山を枕に
恍惚として消ゆらんやうに覚えたりし貫一は、
急遽き
跫音の廊下を
動し
来るに
駭されて
すべて
大材を
用る事目を
駭せり、これ皆雪に
潰ざるの用心なりとぞ。