馬乗袴うまのりばかま)” の例文
旧字:馬乘袴
今日も阿波守は、水襦袢みずじゅばん馬乗袴うまのりばかまをつけたりりしい姿で、津田の浜のお茶屋に腰をすえ、生れ変ったような顔を潮風に磨かせていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盤台面ばんだいづらの汚い歯の大きな男で、朴歯ほうばの下駄を穿き、脊割羽織せわりばおりを着て、襞襀ひだの崩れた馬乗袴うまのりばかまをはき、無反むぞりの大刀を差して遣って参り
と立上ってバラバラとお縁側から庭先へ飛び降りた。肩上の付いた紋服、小倉の馬乗袴うまのりばかま、小さな白足袋が、山茶花さざんかの植込みの間に消え込んだ。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこで、書きものを始末をして立ち上ると、緞子どんす馬乗袴うまのりばかまを穿き、筒袖の羅紗らしゃの羽織を引っかけ、大小を引寄せて、壁にかけてあった大塗笠おおぬりがさを取卸しました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
半襦絆はんじゅばん馬乗袴うまのりばかま、それに縫紋の夏羽織という姿もあり、すそから綿のはみ出たどてらを尻端折しりばしょりして毛臑けずね丸出しという姿もあり、ひとりとしてまともな服装の者は無かったが
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
講武所風のまげに結って、黒木綿の紋附、小倉の馬乗袴うまのりばかま朱鞘しゅざやの大小の長いのをぶっ込んで、朴歯ほおばの高い下駄をがら付かせた若侍わかざむらいが、大手を振って這入って来た。彼は鉄扇てっせんを持っていた。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
手に弓懸ゆがけを着け、木綿の粗服に馬乗袴うまのりばかまという姿で、一見、旗本の息子ぐらいにしか見えませんが、これは万太郎とは莫逆ばくぎゃくの友だち、紀州和歌山城の宰相頼職朝臣さいしょうよりもとあそん世嗣よつぎ、すなわち
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
の忍辱慈悲の法衣の袖に高杉晋作や、西郷隆盛の頭を撫で慈しんだ野村望東尼ぼうとうにとは事変り、この婆さん、女の癖に元陽と名乗り、男髪おとこがみの総髪に結び、馬乗袴うまのりばかまに人斬庖刀を横たえて馬に乗り
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)