頭髪つむり)” の例文
旧字:頭髮
けれども、短く刈りこんだ頭髪つむりはもう大分霜に覆われていて、うしろから眺める背のあたりにふっと老いの佗しさを見かけるときがある。
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
並背なみぜいにていが栗の頭髪つむりも思ひなしか俗とは変りて、藤本信如ふぢもとのぶゆきよみにてすませど、何処どこやらしやくといひたげの素振そぶりなり。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
また一方でお頭髪つむりをおかきになれば一方でもお櫛でおつむりをおかきなさる、そのさまが実に不思議でげす。
「では……そなたは、お父君のおいたつきがなおるようにと、その小さい手で、御仏みほとけかたちを作っていたのですか。……そうかや?」頭髪つむりをなでると十八公麿は、母の睫毛まつげを見あげて、おさなごころにも
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その火の光りでこゝにります女を見ると、年頃としごろは三十二三服装なり茶弁慶ちやべんけい上田うへだうす褞袍どてらりまして、頭髪つむり結髪むすびがみでございまして、もとに愛嬌あいけうのあるあだめいた女ですが
額によりまする小皺まで寸分かわりません、只だかわっているところはお頭髪つむりでげす、此家こゝにおいでになるお若さんは病中でいらっしゃるから、お頭髪なんかにお構いなさらないんで
われは旅稼ぎの按摩で、枕探しで旅を稼いで居たのが、処を離れて頭髪つむりはやして黒の羽織を着て、藪医者然たる扮装なりして素人をおどかし、大寺などへ入込いりこんで勝手は少し心得て居るだろうが