雌雄めすおす)” の例文
勿論、狼にも雌雄めすおすはあるが、いくら雌でも女のような顔はしていないだろう。こう云うときには色々の噂が立つものだ。はははははは。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのかわり、牛が三頭、こうし一頭ひとつ連れて、雌雄めすおすの、どれもずずんとおおきく真黒なのが、前途ゆくての細道を巴形ともえがたふさいで、悠々と遊んでいた、渦が巻くようである。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
窓の外の往来にはまだ年の若い河童が一匹、両親らしい河童をはじめ、七八匹の雌雄めすおすの河童をくびのまわりへぶら下げながら、息も絶え絶えに歩いていました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蛇の雌雄めすおすと木の本末とを見わけよという敵国の難題をといた第二種の話とを、ぎたしているのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
噺のなかの人物の雌雄めすおすの区別もつかず、万事万端でたらめの代わり、そこになんらの理に落ちるところなく、フワフワフワと春の日の石鹸玉しゃぼんだまみたいだから、派手でおかしい。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
牝鶏をて来た。虎吉は鳥屋を厩の方へ連れて行って何か話し込んでいる。石田は雌雄めすおすを一しょに放して、雄鶏が片々かたかたの羽をひろげて、雌の周囲まわりを半圏状に歩いて挑むのを見ている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
主人「それでは皮の白いのが黄身も白くって赤いのが赤い黄身だという訳かね」中川「イヤそうもまらん。幾分かそのかたむきはあるようだけれども一定しておらん」主人「それでは玉子の雌雄めすおすを ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
雌雄めすおすも解らないほどの下手へたくそ筆蹟ですよ」
雌雄めすおす二羽の
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
「あれ、あんた、鹿の雌雄めすおすではあるまいし、笛の音で按摩の容子ようすは分りませぬもの。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのうちに僕らはかげのさした、小さい窓の前を通りかかりました。そのまた窓の向こうには夫婦らしい雌雄めすおすの河童が二匹、三匹の子どもの河童といっしょに晩餐ばんさんのテエブルに向かっているのです。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あれでは雌雄めすおすの区別が付かないなどと悪口をいう者もあった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「二人は雌雄めすおすの鬼だが……可いかい。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)