かりがね)” の例文
迦陵嚬伽かりょうびんがれ馴れし、声今更にわずかなる、かりがねの帰り行く。天路あまじを聞けばなつかしや、千鳥かもめの沖つ波、行くか帰るか、春風の——
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
跡には秋深く夜靜しづかにして、亙るかりがねの聲のみ高し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
……ばかりじゃ無い、……かりがねつばめきかえり、軒なり、空なり、行交ゆきかう目を、ちょっとは紛らす事もあろうと、昼間は白髪の仮髪かつらかむる。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その空へ、すらすらとかりがねのように浮く、緋縮緬の女の眉よ! 瞳もすわって、まばたきもしないで、恍惚うっとりと同じ処を凝視みつめているのを、宗吉はまたちらりと見た。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)