はず)” の例文
思わずそこへ出て来たように声を掛けながら、節子は暗い格子戸の内から日中でも用心のために掛けてある掛金をはずしてくれた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
折々隠袋から金縁きんぶち眼鏡めがねを出して、手に持った摺物すりものを読んで見る彼は、その眼鏡をはずさずに遠い舞台を平気で眺めていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのとき貴方は、鵜飼の隣りで横向きに臥しておいでになり、眼の前にいるのが私とも知らずに、絶えず眼覆めかくしをはずしてくれと、子供のようにせがまれておりました。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこから見渡した外部そとの光景も場所柄ばしょがらだけににぎわっていた。裏へぬきを打ってはずしのできるようにこしらえたすかしの板敷を、絶間なく知らない人が往ったり来たりした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
フォン・エッセン男爵、もうい加減に、その黒眼鏡をはずされたら、いかがですかな。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
とお雪は台所から飛んで出て来て、たすきはずしながら迎えた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
立派な水引みずひきがかかっているので、それをはずして中を改めると、五円札が二枚入っていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)