闌干らんかん)” の例文
というのもやはり元禄の句であるが、天を仰いで闌干らんかんたる星斗に対する間には、天文に関する知識も働けば、宇宙に対する畏怖いふも生ずる。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
いわゆる黄昏の空はまだ太陽の光はどことなくとどめているのにはや闌干らんかんたる宵の明星は光を放っているというような
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
その声を我が恋人の声と思ふて聴く時に、恋人の姿は我前にあり、一笑して我を悩殺する昔日せきじつの色香は見えず、愁涙の蒼頬さうけふに流れて、くれな闌干らんかんたるを見るのみ。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
透通すきとおった闇夜も、闌干らんかんたる星空も、自動車の風よけガラスの隙間すきまから、彼の頬にざれかかるそよ風も、彼の世の常ならぬ結婚の首途を祝福するものでなくて何であろう。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
時これ十二月かんの土用に際して、萬物ばんぶつ結目むすびめちゞまりすくみ、夜天やてん星斗せいと闌干らんかんたれど
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
倒れたきりで仰向けに酔眼すいがんをトロリと見開いて見ると、夜気さわやかにして洗うが如きうちに、星斗せいと闌干らんかんとして天に満つるの有様ですから、道庵先生、ズッと気象が大きくなってしまいました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
闌干方与赤城平 闌干らんかんまさ赤城せきじょうたいらなり
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
トム公は、野毛橋の闌干らんかんから振り向いていた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光明は闌干らんかんとして天雲あまぐものあなたに流れ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
夢に啼けば 粧涙しょうるいあかく 闌干らんかんたり
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)