閑居かんきょ)” の例文
……五度も駕籠を乗り替えたのは、駕籠きなどに足取りを知らせないためであろう、そのうえ閑居かんきょというにはあまりに土地が辺鄙へんぴすぎる。
追いついた夢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
昔は貧乏御家人ごけにん跋扈ばっこせし処今は田舎いなか紳士の奥様でこでこ丸髷まるまげそびやかすの、元より何の風情ふぜいあらんや。然れどもわが書庫に蜀山人しょくさんじんが文集あり『山手やまのて閑居かんきょ
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ときどきの消息に、帰国ののちは山中に閑居かんきょするとか、朝鮮で農業をやろうとか、そういうところをみれば、君に妻子を忘れるほどのある熱心があるとはみえない。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
幾分安堵あんどおもいをなし、室内に閑居かんきょするにいたるや、予が意気豪ならざる故といわんか、た人情の免れざる所ならんか、今まではいとまなくて絶えて心に浮ばざりし事も
多くの巴里人のならわし通りこの男も老後を七、八十巴里から離れた田舎いなか恰好かっこうな家を見付けて買取かいとり、コックに一人の女中ぐらい置いて夫婦の後年を閑居かんきょしようという人達だ。
巴里の秋 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かの仏遺教経の遠離功徳分にあるごとく「寂静無為の安楽を求めんと欲す」る比丘びくは「まさ憒閙かいどうを離れて独処に閑居かんきょし」「当に己衆他衆を捨てて空間に独処し」なくてはならない。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そこで、暫く眠りもやらずグッタリと休息しているうちに、駒井はこのごろ中、自分のこの閑居かんきょへ、偶然に集まって来た連中のことを思い浮べて、微笑を禁ずることができません。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この審判の結果は、ガリレイの書物の領布を禁じ、地動説を放棄することを条件として閑居かんきょを命ぜられたので、その宣告の日には自分でその判決文を読んで宣誓のために署名をさせられたのでした。
ガリレオ・ガリレイ (新字新仮名) / 石原純(著)
私の方からみなさんの方へ遊びにでたいと考えながら、このところ風邪をひいて、胃をいためたもので、閑居かんきょすると、ちょッとのことで病気する、病気がこたえる、仕事のない身はもろいものです。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)