門火かどび)” の例文
町はずれの町長のうちでは、まだ門火かどびを燃していませんでした。その水松樹いちいかきかこまれた、くらにわさきにみんな這入はいって行きました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
門火かどび、門火。)なんのと、呑気のんきなもので、(酒だとかんだが、こいつは死人焼しびとやきだ。このしろでなくて仕合せ、お給仕をしようか。)
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それで身が冷えているだろうといういたわりから、コスガナシだけには麦藁むぎわら門火かどびに焚いてお迎えをし、新らしい方の魂祭たままつりには火を焚かないということである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
桑作はそこに門火かどびいていた一人の若者を半蔵の前へ連れて行った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
踊ったぞ、踊ったぞ。町のまっ門火かどびの中で、刀をぎらぎらやらかしたんだ。楢夫ならおさんと一緒になった時などは、刀がほんとうにカチカチぶっつかったぐらいだ。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
除夜にはサイトリカバといって、白樺しらかばの皮を門火かどびに焚くことは、他の山国の盆の夕も同じであった。年棚にはミタマの飯というものを作って、祖先の霊にささげた。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
忌々いみいみしいと言えば忌々しい、上框あがりがまちに、ともしびを背中にして、あたかも門火かどびを焚いているような——その薄あかりが、格子戸をすかして、軒で一度暗くなって、中が絶えて、それから、ぼやけた輪を取って
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)