門口もんぐち)” の例文
何の樹とも知らないが、これが呼びものの、門口もんぐちに森を控えて、庭のしげりは暗いまで、星に濃く、あかりに青く、白露しらつゆつややかである。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
許宣は白娘子に別れ、小婢に門口もんぐちまで見送られて帰って来たが、心はやはり白娘子の傍にいるようで、じぶんで己を意識することができなかった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あるいは屋敷の門口もんぐちに立ててある瓦斯灯ガスとうではないかと思って見ていると、その火がゆらりゆらりと盆灯籠ぼんどうろうの秋風に揺られる具合に動いた。——瓦斯灯ではない。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
岡の頂上にうつ木をえめぐらしその口は東方に向かいて門口もんぐちめきたるところあり。その中ほどに大なる青石あり。かつて一たびその下を掘りたる者ありしが、何ものをも発見せず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そう思うほどこの閑地は広々としているのである。私たちはやむをえず閑地の一角に恩賜おんし財団済生会さいせいかいとやらいう札を下げた門口もんぐちを見付けて、用事あり気に其処そこから構内かまえうちへ這入って見た。
既に『大窪おおくぼだより』その他の拙著において私は寺の門口もんぐちからその内外を見る景色の最も面白きは浅草の二王門及び随身門ずいじんもんである事を語った。れば今更ここにその興味を繰返して述べる必要はない。
私はただ古びた貧しい小家こいえつづきの横町よこちょうなぞを通りすぎる時、ふと路のほとりに半ば崩れかかった寺の門を見付けてああこんな処にこんなお寺があったのかと思いながら、そっとその門口もんぐちから境内けいだいうかが