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鏽
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さび
ふりがな文庫
“
鏽
(
さび
)” の例文
一段高い廊下の端、隣座敷の
空室
(
あきま
)
の前に、
唐銅
(
からかね
)
で
鋳
(
い
)
て
鏽
(
さび
)
の見ゆる、魔神の像のごとく
突立
(
つった
)
った、
鎧
(
よろい
)
かと見ゆる厚外套、
杖
(
ステッキ
)
をついて、靴のまま。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
物暗き牢獄に鉄鎖の
鏽
(
さび
)
となりつつ十数年の長きを「道義」のために平然として忍ぶ。荘厳なる心霊の発現である。兄弟は一人と死に二人と斃る。
霊的本能主義
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
ここでわれわれは身を投げるか、弁慶の
薙刀
(
なぎなた
)
の
鏽
(
さび
)
となるか、夜鷹に食われるか、それともまた鍋焼うどんに腹をこしらえて行手の旅を急ぐかである。
さまよえるユダヤ人の手記より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
おほよそ手の觸るべきもの、目の視るべきもの、いづれか死滅せざらん。されどペトルスの刀いかでか
鏽
(
さび
)
を生ずべき。寺院の勢いかでか墮つる
期
(
ご
)
あるべき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
世間は気次第で
忌々
(
いまいま
)
しくも面白くもなるものゆえ、できるだけは
卑劣
(
けち
)
な
鏽
(
さび
)
を根性に着けず
瀟洒
(
あっさり
)
と世を奇麗に渡りさえすればそれで好いわ、と云いさしてぐいと
仰飲
(
あお
)
ぎ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
何
(
ど
)
うしたことか傍にあるのは、持ち慣れた、磨き立つた、好く油を引いた鳥銃ではなくつて、古い銃身には一面に
鏽
(
さび
)
の附いた、
撥条
(
はじき
)
の落ちた、
柄
(
え
)
を虫の喰つた鳥銃です。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
綻びた下から醜い正体が、それ見た事かと、現われた時こそ、身の
鏽
(
さび
)
は
生涯
(
しょうがい
)
洗われない。——小野さんはこれほどの分別を持った、利害の関係には暗からぬ
利巧者
(
りこうもの
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
丸いもの! おおかた一つの
鏽
(
さび
)
だらけの銭! その
外
(
ほか
)
瀬戸物のカケラが二つ三つ出て来た。
白光
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
八畳の座敷に余るような
鏽
(
さび
)
を帯びた太い声がした。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
鏽
(
さび
)
が附いて貨幣の値が出るのだ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
世間は気次第で忌〻しくも面白くもなるもの故、出来るだけは
卑劣
(
けち
)
な
鏽
(
さび
)
を根性に着けず
瀟洒
(
あつさり
)
と世を奇麗に渡りさへすれば其で好いは、と云ひさしてぐいと
仰飲
(
あふ
)
ぎ、後は芝居の噂やら弟子共が
行状
(
みもち
)
の噂
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
と
鏽
(
さび
)
のある、
凜
(
りん
)
とした声がかかった。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鏽
部首:⾦
21画
“鏽”を含む語句
赤鏽
鏽斧
鏽銀
赤鏽色
金鏽
鏽声
鏽気
鏽渋
鏽花