きっさき)” の例文
侍たちは、彼を見ると、互いに目くばせをかわしながら、二人三人、きっさきをそろえたまま、じりじり前後から、つめよせて来た。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おゝ、ヂュリエット、おまひ艶麗あてやかさがおれ柔弱にうじゃくにならせて、日頃ひごろきたうておいた勇氣ゆうききっさきにぶってしまうた。
当面の敵を討って取り、ともかくも遁がれようと思ったらしく、頼兼は奮迅の勢いをもって、ただし天井てんじょうきっさきをあてては、刀折れて不覚をとるであろうと、すくい斬りに斬りかかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「然れども立ちたる矢をも抜き給はず、流るる血をも拭ひ給はず、敷皮の上に立ちながら大盃おにさかづきを三度傾けさせ給へば、木寺相模きでらさがみ、四尺三寸の太刀のきっさきに敵の首をさし貫いて宮の御前にかしこまり……」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こう呼ばわると刀のきっさきを、孫六はガバと口にくわえ、真っ逆さまに櫓より飛んだ。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いや、すでに後ろから、忍びよった男のほこは、危うくきっさきを、彼の背に擬している。が、その男は、不意に前へよろめくと、鉾の先に次郎の水干すいかんそでを裂いて、うつむけにがくりと倒れた。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と大音声に呼ばわって、きっさきに貫いた頼兼の首級を、高くかざして味方に示した。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)