銀瓶ぎんびん)” の例文
そして、奥畑が何か話しかけたそうにするのを避けて次の間へ行き、お春が煮かけていた重湯の土鍋どなべをおろして銀瓶ぎんびんを掛け、それが沸くのを待って茶を入れた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それその銀瓶ぎんびんがあって、其のほか、諸道具といい大した財産だ、あの百金は僕の命の綱、これがなければうにもうにもほうが付かぬ、君の都合は僕は知らないから
穏かな冬の日光が障子しょうじ一杯にひろがって、八畳の座敷をほかほかと暖めていた。大きな桐の火鉢ひばちには銀瓶ぎんびんが眠気を誘う様な音を立ててたぎっていた。夢の様にのどかな冬の温泉場の午後であった。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と妻がう。ペンをさしおいて、取あえず一わんかたむける。銀瓶ぎんびんと云う処だが、やはりれい鉄瓶てつびんだ。其れでも何となく茶味ちゃみやわらかい。手々てんでに焼栗をきつゝ、障子をあけてやゝしばし外を眺める。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
真鍮しんちゅう象眼ぞうがん茶托ちゃたくがありまして、鳥渡ちょっとしまった銀瓶ぎんびん七兵衞しちべえ急須きゅうすを載せて
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)