“野師(やし)” の例文
習慣的に堕落して行ったものか、あるいは野師(やし)の手によって教えられたものか、かれは、ふじ子の前にもおじぎをたえ間なくくり返した。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ところが生馬(いきうま)の目を抜くという東京の野師(やし)がこの評判を聞きつけまして、中へ人が入って泣けるような張子の石を拵えました。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「やっぱり市中さ、新網(しんあみ)の仁三(にさ)によ。」「ふむ、野師(やし)の親方。」「うむ、そうだ。」「彼奴(あいつ)も呆(あき)れた茶人だなあ。」鉄蔵は真面目(まじめ)な顔「なに妾(めかけ)じゃねえて。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
繁次は小遣など持ってはいないので、見世物や芝居の看板を眺(なが)めたり、大道野師(やし)の口上を聞いたりしながら、折があったら、参吉にあの女のことを訊くつもりでいた。
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
野師(やし)や水商売や、——多くの人身売買業者達は、六つかしい手続やお上の眼を恐れて、不具の子や、娼婦達を、娘分や息子分にして、その取締の網の目を潜(くぐ)って居たのです。
けれども猫とも虎ともつかない、何か怪しげな動物になれば、古来野師(やし)の儲(まう)けたのはかう云ふ動物恩恵である。我我は面白いと思はないものに一銭の木戸銭(きどせん)をも抛(なげう)つ筈はない。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ハハア、なるほど、見世物師か。それでは俗に野師(やし)という、あの連中のことであるか?」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
見せ物町を通り過ぎると、そこではいろ/\の野師(やし)が巧妙な弁舌を転がしてゐた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
顔青き野師(やし)の女房ら
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)