醸造じょうぞう)” の例文
そうしなければ社会の悪をみずか醸造じょうぞうして平気でいる事がある。今の金持の金のある一部分は常にこの目的に向って使用されている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この産業という中には、米穀を豊作の土池から買って来て、それを他に売りさばくことや、また醸造じょうぞうや薪問屋の営業などもあったとうことです。
伊能忠敬 (新字新仮名) / 石原純(著)
もちろんあの事業にはわたくしの全財産もしてあります。すると重役会で、ある重役がそれをあのまま醸造じょうぞう所にしようということを発議しました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
杉家は酒の醸造じょうぞうを業としていた。住居すまいから五町ほどいった浜辺に酒倉がある。小学校を出ると、弟は、父の意志で、それへ毎日やらされることとなった。
青草 (新字新仮名) / 十一谷義三郎(著)
さて、現在の会社は醸造じょうぞう会社で、規模頗る宏大だ。清涼飲料もやるが、主としてビールをこしらえる。冷蔵室へ行くと、社員は幾らでも飲める。それに待遇も悪くない。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
酪農らくのうから酒の醸造じょうぞうも今ではここで事を欠かない。老幼は養蚕ようさんをして糸をつむぎ、漆林うるしばやしでは漆もる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところで、この酒を一杯けんじよう。これはこの地方で申す火酒ウォッカの一種であって、特別醸造じょうぞうになるもの、すこぶる美味びみじゃ。飲むときは、銀製の深いさかずきで呑めといわれている。
その外に色の濃いのとうすいのとありますが濃いのは醸造じょうぞうの時高い温度を与えたので、その代り香気が幾分か減じます。味といってもからうちに一種の甘味がなければなりません。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一本の木がある、葉が小さくて全身にとげがあり、まめほどの大きさの赤い実をもっている。それはトラルカというもので、黒人はこの木の実から、一種の酒を醸造じょうぞうするのである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
早い話が僕の家は両隣りが会社員だ。片一方はビールを醸造じょうぞうして同胞どうほう酩酊めいていさせるけれど、もう一方は飲み過ぎて脳溢血のういっけつを起しても損の行かないように、生命保険を引受けてくれる。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかるに今までは利用法がないから年々空しく腐っていたのを伊豆の間宮氏という熱心家が五年前から三宅島へこもりて覆盆子液の精製法を研究して去年漸く醸造じょうぞうし得たのがこの覆盆子酒だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
文一君のお父さんはビールを醸造じょうぞうして世間を酔っ払わせるのを専門にしているにも拘らず、言論をもって世道人心せどうじんしんを導く僕のお父さんよりも遙かに謹厳な人である。家庭教育が頗るやかましい。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)