都大路みやこおおじ)” の例文
第十八世に一度姿を現わしたという「赤き死の仮面」が再び姿をかえて入りこんだのではないかと、都大路みやこおおじは上を下への大騒動だった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
どんな屹崛峨々きっくつががたる難曲も、この人のプログラムに載ると、平夷坦々たる都大路みやこおおじの舗装道路にならずにはすまないと言われている。
「こいつは金になる。ならなかったら範宴のやつを素裸にして、都大路みやこおおじさらし物にして曳き出し、いつぞやの腹癒はらいせをしてやろう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのなかでも盗賊の多いというのが覿面てきめんにおそろしいので、この頃は都大路みやこおおじにも宵から往来が絶えてしまった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まだしもかしらが微塵に砕けて、都大路みやこおおじに血をあやさなんだのが、時にとっての仕合せと云わずばなるまい。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(鐘の音)……あれは寺々が夕方の勤行ごんぎょうの始まりをしらせる鐘の音だ。御覧ごらん。太陽が西に傾いた。黄昏たそがれが平安の都大路みやこおおじ立籠たちこめ始めた。都を落ちて行くものに、これほど都合つごうのよい時刻はあるまい。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
たまたま犬の一枚革いちまいがわを背に引かけて車をき、或いは越後えちごからくる薬売の娘のごとく、腰裳こしもを高くかかげて都大路みやこおおじ闊歩かっぽする者があっても、是を前後左右から打眺めて、讃歎する者の無いかぎりは
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平太夫は気も心も緩みはてたかと思うばかり、跣足はだしを力なくひきずりながら、まだ雲切れのしない空に柿若葉のにおいのする、築土ついじつづきの都大路みやこおおじを、とぼとぼと歩いて参ります。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
都大路みやこおおじ一廓いっかく。……とある辻広場。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)