遠近えんきん)” の例文
最初さいしょ彼女かのじょおこった現象げんしょうしゅとして霊視れいしで、それはほとんど申分もうしぶんなきまでに的確てきかく明瞭めいりょう、よく顕幽けんゆう突破とっぱし、また遠近えんきん突破とっぱしました。
電灯が消えると、にわかに聴力が鋭敏になったのだった。いままで聞こえなかった半鐘はんしょうの音が、サイレンに交って、遠近えんきんいろいろの音色をあげていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「どうして遠近えんきん無差別むさべつ黒白こくびゃく平等びょうどうの水彩画の比じゃない。感服の至りだよ」「そうほめてくれると僕も乗り気になる」と主人はあくまでも疳違かんちがいをしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
首のない死骸の事件が遠近えんきんへ聞こえたと見え、見舞いに来る客も仲々多い、其の死骸がお浦でなかったと聞いて安心する人も有り怪しむ人も有った様子だが
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
義務そのものは絶対的であるとしても、個人がこれに対すれば軽重けいちょう本末ほんまつ主従しゅじゅう大小だいしょう遠近えんきん等によりて関係的相違あり、決して絶対的に同等なものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だから私はよく早寝をした。が、床にはいっても容易に眠くはならなかった。雨戸の外では夜鳥よどりの声が、遠近えんきんを定めず私を驚かした。その声はこの住居すまいの上にある天主閣てんしゅかくを心に描かせた。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それと同じ遠近えんきんに、借りて来たスウィッチをひっかけ、真夜中になると、暗闇の中で、練習をしたのだ。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)