へりくだ)” の例文
ニコニコへりくだった微笑をたたえながら、そっと小屋の横から、施米の忙しさや、手摺の外の群衆などを満ち足りた様子で眺めているのでした。
これもこの歌だけについて見れば恋愛情調であるが、何処かへりくだってつつましく云っているところに、和え歌として此歌の価値があるのであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さりとてはあきらめも得ず、またのどの悟りをも見ね、ただすこしおのれ知るからただ堪へてへりくだるのみ。ややややにかくてあるまで。寂しがり寂しがるなる。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そしてまことの知は、ただへりくだる者のみに与えられる。このことをいつまでも忘れないでいて貰いたい。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
病中の身の廻りの世話から、病床よりの命令の伝達に至るまで、一切は豎牛一人に任せられることになった。豎牛の孟丙らに対する態度は、しかし、いよいよへりくだってくる一方である。
牛人 (新字新仮名) / 中島敦(著)
座敷の正面に荒家に不似合いの立派な仏壇が見え、正座に蓮如上人を据え、源右衛門と妻のおさきが少し離れてへりくだって相対して居る。蓮如上人の弟子竹原の幸子坊はえんに腰掛けている。
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
他の患者と微笑を交はすのはへりくだつた楽しみだ
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
さりとてはあきらめも得ず、またのどの悟りをも見ね、ただすこしおのれ知るからただ堪へてへりくだるのみ。ややややにかくてあるまで。寂しがり寂しがるなる。
やくざ者と言つても、まだ若くて貫祿がないせゐか、平次に對しては、ぐつとへりくだだつた態度です。
彼はへりくだる態度を装い、強いて夫人に向って批評を求めた。そこには額仕立ての書画や篆額てんがくがあった。夫人はこういうものは好きらしく、親し気に見入って行ったが、良人を顧みていった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
家持の如く、歌が好きで勉強家で先輩を尊びへりくだって作歌を学んだ者にしてなおくの如くである。万葉初期の秀歌というもののいかなるものだかということはこれを見ても分かるのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
むしろ、世界のきびしい悪意といったようなものへの、へりくだったおそれに近い。もはや先刻までの怒は運命的な畏怖いふ感に圧倒されてしまった。今はこの男に刃向はむかおうとする気力も失せたのである。
牛人 (新字新仮名) / 中島敦(著)
寂しく貧しくましますが故、へりくだり、常に悲しくましましき。いといと悲しくましましき。それ故にすゑ遂に神を知らしき。そのひじり道のべに立たしたまへば雀子は御後みあとべ慕ひ、御手みてにのり、肩にとまりき。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
寂しくて貧しきが故、へりくだり、常に悲しくましましき。いといと悲しくましましき。それ故に、すゑ遂に神を知らしき。その聖道のべに立たしめたまへば、雀子は御後みあとべ慕ひ、御手みてにのり、肩にとまりき。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)