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連𧄍
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れんぎょう
滴々と垣を
蔽う
連𧄍の
黄な向うは
業平竹の
一叢に、
苔の多い御影の
突く
這いを添えて、三坪に足らぬ小庭には、一面に
叡山苔を
這わしている。琴の
音はこの庭から出る。
ちらちらに昼の
蛍と竹垣に
滴る
連𧄍に、朝から降って退屈だと
阿父様がおっしゃる。
繻子の袖口は
手頸に
滑りやすい。絹糸を細長く目に
貫いたまま、針差の
紅をぷつりと刺して立ち上がる。
旅行案内を
放り出して宗近君はずしんと畳を
威嚇して
椽側へ出る。椽側には
御誂向に一脚の
籐の
椅子が、人待ち顔に、しめっぽく
据えてある。
連𧄍の
疎なる花の間から
隣り
家の座敷が見える。