連𧄍れんぎょう)” の例文
滴々てきてきと垣をおお連𧄍れんぎょうな向うは業平竹なりひらだけ一叢ひとむらに、こけの多い御影のいを添えて、三坪に足らぬ小庭には、一面に叡山苔えいざんごけわしている。琴のはこの庭から出る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちらちらに昼のほたると竹垣にしたた連𧄍れんぎょうに、朝から降って退屈だと阿父様とうさまがおっしゃる。繻子しゅすの袖口は手頸てくびすべりやすい。絹糸を細長く目にいたまま、針差のくれないをぷつりと刺して立ち上がる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
旅行案内をほうり出して宗近君はずしんと畳を威嚇おどかして椽側えんがわへ出る。椽側には御誂向おあつらえむきに一脚の椅子いすが、人待ち顔に、しめっぽくえてある。連𧄍れんぎょうまばらなる花の間からとなの座敷が見える。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)