通路かよいじ)” の例文
きみのとこは風呂敷にもしろ、よしんば中がからだって、結びめを蝶々にしたろう。裸体はだかでそいつを引背負ひっしょったって、羽の生えた処は、天津風あまつかぜ雲の通路かよいじじゃないか。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
釈迦岳しゃかがたけの山脈と王岳おうたけ連山の山骨とが一時畳まれた深い谿たにが、通路かよいじと云えば云えもしようか、緑樹紅葉打ちまじり秋山の眺望ながめは美しかったが旅人にとっては難場である。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やっと、善光寺平ぜんこうじだいらへ出て、人々はややほっとした。しかし、あれから松本の里へ出て、木曾路の通路かよいじをたずねると、今はまだ、猟師りょうしさえ通れない雪だというのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朧気おぼろげながら逢瀬おうせうれしき通路かよいじとりめを夢の名残の本意ほいなさに憎らしゅう存じそろなどかいてまだ足らず、再書かえすがき濃々こまごまと、色好み深き都の若佼わこうど幾人いくたりか迷わせ玉うらん御標致ごきりょうの美しさ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……いやアたなびく、天津風あまつかぜ、雲の通路かよいじ、といったのがある。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)