途端はずみ)” の例文
つかまへてお濱さんへの土産みやげにする気で、縁側えんがはづたひに書院へ足音を忍ばせて行つたが、戸袋とぶくろに手を掛けてかきの樹を見上げた途端はずみに蝉は逃げた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
そんなときは、飛礫を打って、不意に梢に非常な震動を与えた途端はずみにその杏をおとすより外に方法はなかった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
折悪しくその第七番目の鰐口わにぐちに刺さっていた鉄棒ピンが、ドウした途端はずみか六番目の炭車トロッコ連結機ケッチンかんからはずれたので、四台の炭車トロッコが繋がり合ったまま逆行して来て、丁度
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
積重つみかさね其上へやつ這上はひあがくだんひも兩端りやうはしを柱の上へ縛付しばりつけ首に卷つゝ南無阿彌陀佛のこゑ諸倶もろとも夜着の上よりまろび落れば其途端はずみに首くゝれ終にぞ息はえたりけるかへつとくお菊は田原町にて金の相談せしに金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこは丁度ある森の中の橋の上で、あたりには人一人通らず極く淋しい処でした……と思う間もなくどうした途端はずみか、お婆さんは不意に今まで大切に抱えていた果物の籠を
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ところがそのうちにボーイがウイスキーを入れた珈琲を持って行くと、その男はどうした途端はずみ卓子テーブルの上に取り落したので、慌てて外套のポケットから白いハンカチを出して押えた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
手を引いてどこかへ連れて行こうとする様子でしたが、その時どうした途端はずみか顔を包んでいたきれが取れると、これがの半腐れの香潮で、集まっている者は皆その顔付の恐ろしさに
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)