近眼きんがん)” の例文
「僕は禿にはならずにすんだが、その代りにこの通りその時から近眼きんがんになりました」と金縁の眼鏡をとってハンケチで叮嚀ていねいいている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし鼬はひどい近眼きんがんでありました。だから蝋燭のまわりをきょろきょろとうろついているばかりでありました。
赤い蝋燭 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
(登場。せて背の高き男。)もうそろそろ出掛けても好いでしょう。(ゾフィイを見て、暫くは近眼きんがんのために、誰とも見分かず、たちまちそれと知りて。)
主人はなつかしげに無造作むぞうさにこういって玄関げんかんがりはなに立った。近眼きんがんの、すこぶる度の強そうな眼鏡で格子こうしの外をのぞくように、君、はいらんかという。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
この時、近眼きんがんがあまり遅くなると困るからと言って席を立った。その横顔をじろりと見上げて、自分は少し不愉快の意を表したけれども、彼は気がつかなかった。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
にんは、いずれも動物どうぶつきなので、ほそくしてわらいました。ことに近眼きんがん青木あおきは、かおげて、眼鏡めがねひからしながら、そのときのおかしさをおもしたように
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
宮本は眼鏡めがねを拭いながら、覚束おぼつかない近眼きんがんひたいごしににやりと保吉へ笑いかけた。
寒さ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「なかなか憤慨するじゃアありませんか」と、ひどい近眼きんがんらしい人もにッこりして冷かしを言った。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「猫八君は自分の芸をあまりばかにしてはいませんか?」近眼きんがんがこう自分に質問した。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)