まわり)” の例文
旧字:
彼女は早くその手紙を出すことの出来なかった身のまわり種々いろいろな消息を書いた末に「早くお目に掛りとうございます」ともしてよこした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
尤もお弟子さんの手前、このお子さん達が身のまわりの世話をしてくれるので、漸くこゝまで出て来ましたとは告白しかねたろう。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それは、今まで自分の身のまわりにいたムク犬が、いつのまにどこをくぐってか、もう庭の中へ入り込んでいて、しかも、極めて物慕わしげに、竜之助の傍へ寄って行くことであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もはやこらえきれなくなって、泣き出そうとしました時、お爺さんの身のまわりから鬼火のようなものが、とろとろと燃え上りましたかと思うと、もはや消えて真暗まっくらやみになって、身体がだるくなって
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
高い帯揚のしんは減らせ、色はもっと質素なものをえらべ、金の指輪も二つは過ぎたものだ、何でも身のまわりを飾る物はしまって置けという風で
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
身のまわりよどんだ空気のことを書いて、その中に大きな声さえ出すことも出来ないように坐って、いやだいやだと思いながら今の境遇に引かれて行くのは
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
下宿に移ってからの岸本は、子供の身のまわりの世話から言っても、女の手をわずらわしたいと思うことが多かった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かたづいて来たばかりで、まだ娘らしい風俗がお雪の身のまわりに残っていた。彼女の風俗は、豊かな生家さとの生活を思わせるようなもので、貧しい三吉の妻には似合わなかった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)