身銭みぜに)” の例文
旧字:身錢
みんなしない身銭みぜにを切って菓子だの果物だのと持って来ては、医員に叱られるような大きな声で愉快な話をして慰めてくれた。
枯菊の影 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
身銭みぜにを切ってまで突留めるところは突留めないと、寝覚めの悪い性分でゲスから、随分、骨を折りましてな。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし勝次郎は身銭みぜにを切って、なぜそんな悪い知恵を授けたのか、それは利助も知らないらしかった。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小山内氏はい事を承認したものだ。もしか女がその折おあしを立て替へたとでも言つたら、「ほんとにさうだつたね」と二つ返事で身銭みぜにを切つて払つてやるとなほよかつた。
正直ぽうで、それに乾児こぶんのものなどに対しては同情おもいやり深く、身銭みぜにを切っては尽くすという気前で、自分の親のことを自慢するようであるが、なかなかよく出来た人であった。
やっと龍造寺主計の身銭みぜにから離れて、家だけの財政として独立したかたちになっていた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それでも相当に今日まで身銭みぜにを切っているから、今日のたれ死もしないで、トモカクこうして永らえてもいられる、ということを神尾主膳も、身につまされて、どうやら
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
岡崎氏も人並はづれた牛好きだけに、喜んでその註文を引受けて製作にかゝつたが、くだん註文主ちゆうもんぬしは、牛を馬に乗り替へたものか、その後とんと音沙汰をしないので、岡崎氏は今では身銭みぜにを切つて
貧乏人のくせに身銭みぜにを切って馬鹿囃子を雇い、家業をそっちのけにして騒いでいるのに、大尽は大評判を立てた上に、こんなことでも充分に算盤そろばんを取れるようにするのだから
後家さんは闊達かったつなもので、愛嬌で泊り客をなめまわし、身銭みぜにをきっておごってみたり、踊りの時などは、先へ立って世話を焼いたりするものですから、つい人心を収攬しゅうらんしてしまって
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)