踏躙ふみにじ)” の例文
踏躙ふみにじ気勢けはいがすると、袖のもつれ衣紋えもんの乱れ、波にゆらるゝかと震ふにつれて、あられの如く火花にて、から/\と飛ぶは、可傷いたむべし引敷ひっしかれとげを落ちて、血汐ちしおのしぶく荊の実。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
風早學士は、何時の間にか其の雪の薄ツすりと消殘ツてゐる箇所ところまで來て了ツた。かまはず踏込むで、踏躙ふみにじると、ザクザクしづかな音がする……彼は、ふと其の音に耳を澄まして傾聽した。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
むざんに踏躙ふみにじられた期待を胸にしながら、致し方なく河原に下りて、とある空家の軒場にビバークの用意をした。暗い。この世のものとは思われぬほど真っ暗な夜である。妙に滅入ってしまった。
随分主人のつらでも、友達の面でも、踏躙ふみにじつて、取る事に於ては見界みさかひなしの高利貸が、如何いかに虫の居所が善かつたからと云つて、人の難儀——には附込まうとも——それを見かねる風ぢやないのが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
赤や白のビラがコンクリイトの上に踏躙ふみにじられた活動写真館の入口に
茶色っぽい町 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
踏躙ふみにじみ裂きて、立在たちどころに息の根とどめぬ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)