路筋みちすじ)” の例文
今から振返ってみると、歌がこのごろのように職業者の手に移ってきた路筋みちすじもほぼたどることができる。始めには頻々たる流行唄はやりうたの移植があった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私はその願いを人間らしい、純なものとは知っていた。けれど私にはその願いを行為に移す路筋みちすじで心のなかに深い支障があった。私は永い間黙ってこらえてきた。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
雹の通る路筋みちすじはほゞきまって居る。大抵上流地から多摩川たまがわに沿うてくだり、此辺の村をかすめて、東南に過ぎて行く。既に五年前も成人おとな拳大こぶしほどの恐ろしい雹を降らした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この路筋みちすじさえ御存じでらっしゃれば、世を離れました寂しさばかりで、けだもの可恐おそろしいのはおりませんが、一足でも間違えて御覧なさいまし、何千じょうとも知れぬ谷で、行留ゆきどまりになりますやら
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ましてや汀線ていせんの角度のちがい、風が内陸へ入って行く路筋みちすじによって、それぞれに異なる語原があったかのごとく、考えてみる必要などはないのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昨年創始せられた新嘗にいなめ研究会の成績がせつに期待せられるとともに、一方にはまた稲の品種の精密なる比較検討によって、追々にその伝来の路筋みちすじを明かにし
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その変遷の路筋みちすじが、今はまだかすかに二十三夜様の方の話によってわかるのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
親が貧困で娘を奉公に出すというような草冊子風くさぞうしふうなものは別としても、普通の家に生まれた女の子が、次第にこの仲間になって行く路筋みちすじは、かなり大きく開かれていたように思われる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
町内の附合つきあいまたは組合の義理と称して、各戸総出そうでをもって行列を作り、一定の路筋みちすじを廻歴した慣習のごときも、これを個々の事変に際する協力といわんよりは、すこぶる葬礼祭礼などの方式に近く
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鹿々の遊戯などは、幸いにして互いによく似ていて、とうてい中心なしに別々に始まったものとは思えない。だから各地の実例を引合せて、やがてその運搬の路筋みちすじがわかってくるかも知れぬのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)