貼出はりだ)” の例文
この時二十八歳だったかと思います。大変若くて呼び者であったが、暫くするとこういう貼出はりだしが出ました。学校の中を下駄を穿いて歩いてはいけない。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは道ばたの一軒の大きな商家が、明障子あかりしやうじの上に貼出はりだした広告の文字であつた。太い筆でかう書いてあつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
こういう酩酊めいてい為方しかたいなあ、と思いかけていましたが、便所に立ったとらさんが帰って来て、「オイ表に出てみろよ、大変な貼出はりだしが出ているぜ、ハッハッハ」と豪傑ごうけつ笑いをするので
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「この店譲ります」と貼出はりだししたまま、陰気臭くずっと店を閉めたきりだった。柳吉は浄瑠璃の稽古に通い出した。たくわえの金も次第に薄くなって行くのに、一向に店の買手がつかなかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
かべには道場の貼出はりだしのように、名を書きつらねた一枚の巻紙が貼ってあるのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
会社の掲示板に貼出はりだされたり、仙太郎自身社長に呼出よびだされて口汚く面罵されたり、同僚の丹波丹六にコキ使われたり、冷かされたり、そして遂に、丹波丹六がいよいよ社長の聟養子となって
外国語学校に通学していた頃、神田の町の角々かどかどに、『読売新聞』紙上に『金色夜叉こんじきやしゃ』が連載せられるという予告が貼出はりだされていたのを見たがしかしわたくしはその当時にはこれを読まなかった。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこで床平とこへいが、自分じぶんやけあとへ貼出はりだしたのは——
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
楽屋口へ這入ると「今日終演後ヴァラエテー第二景第三景練習にかかります。」だの、何だのと、さまざまな掲示の貼出はりだしてある板壁に沿い、すぐに塵芥ごみだらけなあぶなッかしい階段が突立っている。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)