貴紳きしん)” の例文
またこの両三日中の訪問者には、京都の名だたる貴紳きしん網羅もうらしているといってよい。菊亭晴季きくていはるすえを始め、徳大寺、飛鳥井あすかい鷹司たかつかさの諸卿。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芸妓の鼻息はあらくなって、真面目まじめな子女は眼下に見下され、要路の顕官けんかん貴紳きしん、紳商は友達のように見なされた。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
虫のわくごとく地にこれをわかせたものは、宋朝自体の腐土ふどではないか。“この世をば我が世”と思い上がっている貴紳きしん大官ではないか。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、徳川殿というはれの大賓をむかえ、浜松の家中にも、京の貴紳きしんにも、織田家の宿将たちにも、のこらず知れ渡ることだからである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父は俗吏中の俗人のように、一般から見られているが、十九歳から公卿くげ貴紳きしんとの交際に立ち交じっているので、歌道もやれば香道のたしなみもある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貧しい尾張の土に、何か未来の芽ばえを感じ、貴紳きしんの礼風を真似まねて、上下とも華奢きゃしゃな今川領の風俗に、むしろ軽い反感と、危うさをいつも思わせられた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷泉家や斎宮いつきのみやなどをとおして、それとなくとうの大敵、大塔ノ宮を陥れるざんを植えてゆき、道誉もそれにあわせて、馴じみの武器商人や公卿貴紳きしんのあいだに、巧妙な流言るげんをまいていたのだった。
酒をになわせ、財を車にのせ、名器名物を捧げて、上は月卿雲客げっけいうんかく貴紳きしんから、富豪や名のある町人たちまで、いったい何のために、御機嫌伺いの参賀のと、こんなに押しかけてくるのだろうか?
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)