豈計あにはか)” の例文
むろん私にもそれとなく打ち明けて、万事が清算済みになったつもりでいたらしいのですが、これが豈計あにはからんやの思いきやでした。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
豈計あにはからんやある場合には、そんな社会上の地位を得て相当の財産を有しておればこそ訳がわからないのである
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
親分はなまけ者で、子分は呑氣者で、お米の値段とかゝはりのない掛け合ひばなしばかりしてゐるのかと思ふと、豈計あにはからんや、今日はまた金儲けの話を持込んで來る八五郎です。
もう東京は駄目だ、その代り地方が繁昌するに違いないと、機敏なところを見せたつもりであったらしいが、豈計あにはからんや事実は正反対になった。
三箇月も四箇月も遊んでいる人があるのでこれは気の毒だと思うと、豈計あにはからんやすでに一年も二年もボンヤリして下宿に入ってなすこともなく暮しているものがある。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勝手にしやがれと思い思い、何だか気になるから開けてみたら、豈計あにはからんやだ。試験官の直筆だったが及第きゅうだいも及第。とりあえずお芽出度う存ずる。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自分じぶんいま腹痛ふくつうなやんでゐる。その腹痛ふくつううつたへいだいてると、豈計あにはからんや、その對症たいしやう療法れうはふとして、づかしい數學すうがく問題もんだいして、まあこれでもかんがへたらからうとはれたと一般いつぱんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
朝鮮沿海からドンの音が一掃されたので、最早もはや大願成就……金比羅こんぴら様に願ほどきをしてもよかろう……と思ったのが豈計あにはからんやの油断大敵だった。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これこそ燐寸マッチ……と思って近付いてみると豈計あにはからんや、それは燐寸マッチではなくて黒い表紙の付いた小型の聖書であった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
スラスラと原稿が書けるものと思い込んで、机に向ったものでしたが豈計あにはからんや、一行も書けないのです。
スランプ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
放課後までその帽子に手を触れる者は無い筈と、安心して帰ったら、豈計あにはからんや、その帽子の先生が急用で自宅に帰ると、発見して、中の文句まで読んでしまった。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
どうせインチキの支那料理だろうと思って近寄ってみると豈計あにはからんや、インチキでない証拠に、店の張出し窓の処にワンタン十銭、シウマイ十銭、チャアシュウ十銭
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところが生憎あいにくな事に、そうした中風患者の脳髄を病理解剖に附した結果を見ると、いつも豈計あにはからんやの正反対になっている。脳出血でやられているのは、脳髄の全体ではない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これを聞いた時には流石さすがに海千山千の吾輩も、尻に帆を上げかけたね。大学の中だけは学術研究の安全地帯だと思っていたのが、豈計あにはからんやのビックリ箱と来たもんだからね。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
席亭話よせばなし鍋草履なべぞうりてえのと間違いそうですね。女の事が「レデー」ですから男の事が「デレー」かと思ったら豈計あにはからんや「ゼニトルマン」でげす。成る程これあ理窟でゲスが失礼したくなりますね。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その事実の裡面に今一歩深く首を突込んでみると豈計あにはからんや。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)