讐敵かたき)” の例文
嬢次少年はその両親の讐敵かたきを取るべく私を手先に使って、曲馬団に致命的の打撃を与えているのだ……という私の直覚? であった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
男同志の合戦は、お侍さんたちに任せておけばよい。が、年来の讐敵かたきともいうべき、鬼火の姥めがまた出しゃばって、そんな態度を
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
伊藤侯と云ふものは我々婦人に取つては共同の讐敵かたきではありませんか、銀子さん、私が松島様の申込を拒絶する為めに、仮令たとへ私の父が破産する如き不幸にひませうとも
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あの六左衛門の親戚でしか讐敵かたきのやうに仲の悪いとかいふ男から斯の話がれたとのこと。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まつすぐ喧嘩の、繩ばりの、讐敵かたきの修羅場へたたき込む。
蝶を夢む (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
お母様の讐敵かたきを取りたい……義理のお父様の隠れ遊びをおいさめになりたいばっかりに、私の頼みを無条件で引き受けて下すったのです。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
入れ、拙者、貴殿へ助太刀つかまつるぞ。……ただし、拙者と貴殿とは讐敵かたき同士、恩に着るに及ばぬ、恩にも着せ申さぬ! ……五郎蔵!
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
条約の精神が行き渡るなら、今日すでに日本国じゅうのものが交易の利を受けて、おのおのその便利を喜ぶであろう。決して今日のように人心動揺して外人を讐敵かたきのように見ることはあるまい。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうして裸体ぱだかのままお酒を飲んで寝ている憎らしい叔父の顔をメチャメチャに斬ってやったの……お母さんの讐敵かたき……って云ってね。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それには訳がございます」婦は皮肉のえみを洩らし、「黙って家は出たものの、思うに恐らく父の讐敵かたきを討ち取るためでございましょう!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
但しお金が少々かかるが。かかる代りに利益もうけが大きい。とかくこの世はお金が讐敵かたきじゃ……チャカポコチャカポコチャカポコ……
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「……ホホホホホホ。ホホホホあなた見ていらっしたの……ホホホホホホ。ステキだったでしょう……わたし……とうとう讐敵かたきを討ったのよ……」
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
否、むしろ讐敵かたき同士かも知れない……という驚愕すべき事実を、いとも儼然げんぜんと証拠立てている事になるではないか。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのうちにしおがさして来て、岩の上が狭くなったから、どこかへ泳いで行くつもりで、とっさんの耳に口を当て、「待っておいで……讐敵かたきを取ってやるから」
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……つまりわたしは、二十年ぜんに殺された、妾の実のお父さんの讐敵かたきを討たなければ結婚をしない決心だと云うので……イヤもうトンチンカンにも、時代錯誤にも
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お前の一生涯の讐敵かたきだから、この間お前が頼んだように、誰にもわからない処で、一番恐ろしい……一番気持のいい方法で讐敵かたきを取らしてやる決心をして、現在、極秘密のうち
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ジョージとジョージの新しい女に讐敵かたきを打たなければ駄目です。私が手伝って上げます。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
海上を流浪する事十箇月……その片手間に親の讐敵かたきだというので、潜行爆薬モグリハッパの抜け道を探るべく、あらん限りの冒険をこころみていたが、お蔭で字が読めるようになっていた上に、朝鮮語と
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「……そうなんです……品夫は親の讐敵かたきを討ちたいから、今しばらく結婚を延期してくれと云うのです。……あんまり馬鹿馬鹿しい云い草なので、実は僕も面喰っているのですがね……ハハハハハ」
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
娘の讐敵かたきは同じ奴……この絵巻物の事情わけを知りながら
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)