護謨輪ゴムわ)” の例文
すると、そこに兄の車を引くかつと云うのがいた。ちゃんと、護謨輪ゴムわの車を玄関へ横付にして、叮嚀ていねいに御辞義をした。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
沼南の金紋護謨輪ゴムわの抱え俥が社の前にチャンと待ってるんだからイイじゃないか。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
かの悪魔の使者は護謨輪ゴムわの車に、音も立てず、そっと玄関に忍び寄ったのだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
主人が主人で、出先に余り数はなし、母衣ほろを掛けて護謨輪ゴムわきしらせるほど、光った御茶屋には得意もないので、洋傘こうもりをさして、抱主がついて、細かく、せっせと近所の待合小料理屋を刻んで廻った。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「成金が通るネ——護謨輪ゴムわかなんかで」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
津田のうちとほぼ同じ方角に当る岡本の住居すまいは、少し道程みちのりが遠いので、三人のあといたお延の護謨輪ゴムわは、小路こうじへ曲る例のかどまでいっしょに来る事ができた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小路こうじを出た護謨輪ゴムわは電車通りばかり走った。何の意味なしに、ただにぎやかな方角へ向けてのみ速力を出すといった風の、景気の好い車夫の駈方かけかたが、お延に感染した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私が家へはいると間もなくくるまの音が聞こえました。今のように護謨輪ゴムわのない時分でしたから、がらがらいういやひびきがかなりの距離でも耳に立つのです。車はやがて門前で留まりました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)