誇顔ほこりがお)” の例文
旧字:誇顏
縄なくて十重とえくくとりこは、捕われたるを誇顔ほこりがおに、さしまねけば来り、ゆびさせば走るを、他意なしとのみ弄びたるに、奇麗な葉を裏返せば毛虫がいる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日頃人に向ひて『文芸倶楽部』はわれを戴きて主筆とせしよりたちまち発行部数三、四万をこゆるに至れりと誇顔ほこりがおに語るを常としき。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
商家の小僧が短夜みじかよ恨めしげに店の大戸がらがらとあくれば、寝衣ねまき姿すがたなまめきてしどけなき若き娘が今朝の早起を誇顔ほこりがお
銀座の朝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
といと誇顔ほこりがおにほざいたり。小親わが手を放たむとせず。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
是だけ語りて生田はいと誇顔ほこりがお
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
不夜城を誇顔ほこりがおの電気燈は、のきより下の物の影を往来へ投げておれど、霜枯三月しもがれみつきの淋しさはまぬかれず、大門から水道尻まで、茶屋の二階に甲走かんばしッた声のさざめきも聞えぬ。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
誇顔ほこりがおなる百合ゆりの花、ひややかに造りしやうなる椿つばきの花束