詞書ことばがき)” の例文
「そうだ、では。——同じ頃、武蔵の国に打ち越えて、小手指ヶ原という所に——という詞書ことばがきの条にある、同じ親王のお歌は?」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
詞書ことばがきによって、題詠でないらしい歌、つまり題を与えられて、それによって作文の稽古のように無理にまとめたのではないらしい歌をあさって見る。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
これには、「天皇崩じ給ひし時、倭太后やまとのおほきさきの御作歌一首」と明かな詞書ことばがきがある。倭太后は倭姫皇后のことである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その中で一番有名なのは源俊頼みなもとのとしよりの『散木奇謌集さんぼくきかしゅう』の中の、「尼上あまうへうせたまひて後、みみらくの島のことを思ひ出でてよめる」という詞書ことばがきのある歌であるが
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
映画のタイトルに相当する詞書ことばがきの長短の分布もいろいろ変化があって面白く、この点も研究に値いする。
山中常盤双紙 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
侍従の君のことが原因で病死したと云う今昔こんじゃくの記事に従えば、何となく平中の方が時平しへいより先に死んだような感じを受けるが、前掲の後撰集の詞書ことばがきなどを読むと
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
詞書ことばがきが重要な役割を果すことはむろん、そのひらがなの書体が、絵の延長のやうに鑑賞された。
『東京人類学雑誌』二九九号に載せ、また絵師に摸させ自分詞書ことばがきを写して米賓スウィングル氏に贈りしに、ス氏木村仙秀氏に表具してもらい、巻物となし今も珍蔵する由。
また俊頼としよりの歌の詞書ことばがきにも
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その詞書ことばがき
それと『新葉集』との詞書ことばがきは吉野朝史の重要な根本史料の一つであるが、ここには専らこの吉野朝の柱石であられた親王の御歌だけを掲げて置こう。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
おととしの頃、光広卿から頼まれて、ようようこのほど描きあげたわたしのつたない絵巻じゃが、詞書ことばがきを光広卿が遊ばして、献上するお心と聞いておる。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古今集巻十八ぞう所載「き世にはかどさせりとも見えなくになどか我が身の出でがてにする」と云う歌は、「つかさの解けてはべりける時よめる」と云う詞書ことばがきの通り
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
詞書ことばがきには和銅五年夏四月長田王ながたのおおきみ長親王ながのみこの御子か)が、伊勢の山辺やまべ御井みい(山辺離宮の御井か壱志郡新家村か)で詠まれたようになっているが、原本の左注に、この歌はどうもそれらしくない
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
まだ詞書ことばがきがついていないので、何の物語を絵にしたものかわからないが、そこに描かれてある平安朝の頃の風俗や生活が土佐流のこまかい筆と、華麗な絵具だの砂子にいろどられて、次から次へと
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)