言出いいだ)” の例文
松田駅の待合室で次の下りを待合せている間、伯父は色々解らないことを言出いいだして三造を弱らせた。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
デミトリチの顔付かおつき眼色めいろなどをひどって、どうかしてこの若者わかもの手懐てなずけて、落着おちつかせようとおもうたので、その寐台ねだいうえこしおろし、ちょっとかんがえて、さて言出いいだす。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
仰々ぎょうぎょうしく言出いいだすと、かたき髑髏しゃれこうべか、毒薬のびんか、と驚かれよう、真個まったくの事を言ひませう、さしたる儀でない、むらさききれを掛けたなりで、一しゃくずん一口ひとふり白鞘しらさやものの刀がある。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかし何分にもその筋の検挙がおそろしいので、京子はもとの芸者になろうと言出いいだす。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
哥太寛こたいかんが、——今夜だわね——其の人たちを高楼たかどのまねいて、話の折に、又其の事を言出いいだして、鸚鵡おうむの口真似もしたけれども、分らない文句は、鳥の声とばツかし聞えて、そばで聞く黒人くろんぼたちも
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)