親族みより)” の例文
あれには兄弟も親族みよりもない者だから、行々ゆく/\おれ里方さとかたに成ってほかへ養子にやり、相応な侍にしてやろうと仰しゃいますから、わたくし折々おり/\うちの家来善藏ぜんぞうなどに
鰥寡かんか孤独の人間で親族みよりもなければ妻もない。毎夜夜半まで官舎の古びた机に倚って孤影凝然と犯罪学クリノロジイの研究に従っている、いわば検察のためにこの世に生れて来たような人物。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
浮世はつれなし親族みよりなりける誰れ彼れが作略に、爭そはんも甲斐なや亡き旦那樣こそ照覽ましませ、八幡いつはりなき御たねなれども、言ひ張りてからが欲とやいはれん卑賤の身くやしく
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だが彼様あんな人は諦めておくんなましよ、しっかりしなましよ、おまはんも親族みより兄弟もなし、わちきも親族兄弟がないから、お互に素人に成ったらば姉妹きょうだいになろうと
與之助が胸に思ふことあり、八歳の年より手鹽にかけたれば、我が親族みよりにはあらねどお近とても憎くはあらで、同じくは願ひのまゝに取むすびて、二人が嬉しき笑顏を見、二人が嬉しき素振を眺め
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たとえ年が明けてもお側に参ることは出来ますまいけれども、親族みより便りのない身の上を不便ふびんと思召し、お小間使いなりとも、御飯焚ごはんたきなりともいといませんから
つかい果たして死ぬのは、十一の時から育てられた旦那様に済まねえけれど、どうか御勘弁なすって下さい、己もお前も親はなし、親族みよりも少い体で斯うなるのは全く宿世すぐせの約束だなア
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其方そちは感心な奴だと常々兄上もめていらっしゃる、主用しゅようがなければ自用じようを足し、少しも身体にすきのない男だと仰しゃっている、それに手前は国に別段親族みよりもない事だから、当家が里になり
それよりは友さんも親族みよりのない人なら其の人の為には香花こうはなでも手向たむけた方が宜しい、またおっかさんもお前さんを女郎に売るとか旦那を取れとか、お前さんの厭な事をしろと云う訳はないから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)