のり)” の例文
こうして、うつくしいすこやかな千浪と、練塀小路の小鬼、美青年伴大次郎とは、男女ののりを越えない潔い許婚の仲をつづけて来ている。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
を思うさえ恋となる、天上ののりを越えて、おきてを破って、母君が、雲の上の高楼たかどのの、玉の欄干らんかんにさしかわす、かつらの枝を引寄せて、それにすがって御殿の外へ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お言葉じりのしどけなくなってしまう様子などの可憐かれんさに、源氏は思わずのりを越した言葉を口に出した。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それを一部の社会では神聖な恋愛だとか人情の自然だとか、大層はやして奨励するような口気こうきがある。実に沙汰さたの限りだね。人間は誰でも自分の分限ぶんげんを守って心ののりを超えないのが美徳だ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)