覆布おおい)” の例文
その列の先に見えた人は、葛城かつらぎの峰の雪よりも真白い喪服もふくを着、白木の台に白い覆布おおいをかけたのを捧げていた。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほど、解剖台の上には屍体の覆布おおいがあるばかりで、さっきまで有った筈の屍体が影も形もなくなっていた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
マイダスには、この黄色い日影が、寝床の白い覆布おおいに何だか変な風にうつっているような気がしました。
手袋を穿めたままの両手を念入りに洗って参りました若林博士は、やおら身をかがめまして、寝棺の白い覆布おおいを取りけて、これとてもこのような室には滅多に見受けられぬ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「まア、どうしたのでしょう。ゴタゴタしていたものだから、私はすっかり鸚鵡の始末を忘れていたよ」女中は独言をいいながら、帽子掛のついた鏡の前に置いてある鳥籠の覆布おおいを持ってきた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
労役牛の汗、ほこりで白い撒水さっすい自動車の鼻、日射病の芝生しばふ、帽子のうしろに日覆布おおいを垂らしたシンガリイス連隊の行進、女持ちのパラソルをさして舗道に腰かけている街上金貸業者、人力車人リキシャ・マン結髪シイニョン
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
あかつきを待って、覆布おおいがとりのぞかれると、その下から、地下戦車はすこぶる怪異かいいな姿をあらわした。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
覆布おおいの下には、血にそんだよろい草摺くさずりの片袖と、血糊のりによごれた黒髪とがせられてあった。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)