襤褸切ぼろきれ)” の例文
平次は木戸を押しあけ、むしろを払って驚きました。まだ検屍のすまぬ太吉の死骸は、薄湿りの大地の上に、しゅを浴びた襤褸切ぼろきれのように倒れていたのです。
になえるかごは覆りて、紙屑、襤褸切ぼろきれ硝子がらす砕片かけなど所狭ところせまく散乱して、すねは地をり、手はくうつかみて、呻吟しんぎんせり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平次は木戸を押しあけ、むしろを拂つて驚きました。まだ檢屍のすまぬ太吉の死骸は、薄濕うすじめりの大地の上に、朱を浴びた襤褸切ぼろきれのやうに倒れて居たのです。
ずたずたになれるむしろの上に、襤褸切ぼろきれ藁屑わらくずわん、皿、鉢、口無き土瓶、ふた無きなべ、足の無きぜん、手の無き十能、一切の道具什物じゅうもつは皆塵塚ちりづかの産物なるが、点々散乱してその怪異いうべからず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
八五郎にみちびかれて行つて見ると、大溝の中に落込んで、襤褸切ぼろきれのやうになつて居るのは、玉屋の番頭甚助の死骸。まだ檢死が濟まないので、手を付ける者もありません。
婦人おんなは絹の襤褸切ぼろきれくだんの粉を包んで、俯向うつむいて、真鍮の板金を取った。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)