襖越ふすまごし)” の例文
私は無論襖越ふすまごしにそんな談話を交換する気はなかったのですが、Kの返答だけは即坐に得られる事と考えたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
客は手持無沙汰てもちぶさた、お杉もすべを心得ず。とばかりありて、次の襖越ふすまごしに、勿体らしいすましたものいい。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし下女が襖越ふすまごしに手を突いて、風呂のいた事を知らせに来た時、彼は急に思いついたように立ち上った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
襖越ふすまごしに聞いている人にまで、何人で叩くのか、非常な多人数たにんずで叩いている音の様にきこえると言います。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふすまの蔭で小夜子がはなをかんだ。つつましき音ではあるが、一重ひとえ隔ててすぐむこうにいる人のそれと受け取れる。鴨居かもいに近く聞えたのは、襖越ふすまごしに立っているらしい。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時、待合の女房が、襖越ふすまごしに、長火鉢のとこで、声を掛けた。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昨日きのうひる襖越ふすまごしに聞いていると、太郎冠者たろうかじゃがどうのこうのと長い評議の末、そこんところでやるまいぞ、やるまいぞにしたら好いじゃねえかと云うような相談があった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おい、佐伯さへきのうちは中六番町なかろくばんちやう何番地なんばんちだつたかね」と襖越ふすまごし細君さいくんいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)