血達磨ちだるま)” の例文
山淑の豆太郎、全身血達磨ちだるまのごときすがたで地にのたうちまわったのもしばらく、やがて草の根をつかんで動かなくなった。絶え入ったのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一人の武士が、血達磨ちだるまになって幾人も幾人も生きた人間を斬る絵は、小さい余吾之介をどんなに脅かしたでしょう。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし私の実母は、死ぬ少し前に、始めて猿若さるわかの芝居を見た。三代目中村歌右衛門の血達磨ちだるまで、母が江戸へ出て来て始めてこの大芝居を見たのであった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
「うーむッ……」とおめいたが、旅川周馬、血達磨ちだるまのように染まってまだ走った。しかし、それも六、七間、りゅうッと風を泳いできた捕縄に足を巻かれて地ひびきを打つ。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて帽子から顔から肩先から、けた血で血達磨ちだるまのようになった男です。なるほどこの肉も血も、珠江夫人のではなかった。貴下の言うとおりにネ。血型けっけいO型の人肉は誰だったのでしょう。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
訥子といへば「血達磨ちだるま」や「丸橋忠弥」の立廻りで、牛のやうにえながら牛のやうに挌闘かくとうするので聞えた男だが、あれだけの激しい立廻りをするのは、何か特別の滋養やしなひを採らなければならない。
血達磨ちだるまのように全身あけに染って、あえぎながら手をついているのです。
たれげた一梃いっちょう駕籠かごの前に、返り血やら自分の血やらで、血達磨ちだるまのようになりながら、まだ闘士満々としている、精悍せいかんそのもののような鶴吉が、血刀を右手にふりかぶり、左手を駕籠の峯へかけ
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
築山の中腹に血達磨ちだるまのごとき姿をさらして、左膳は、左剣を大上段に火を吹くような隻眼で左右を睥睨へいげいした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)